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【私的分析】菊池涼介選手は日本人野手のメジャー挑戦への試金石だった!?

2019年オフにポスティングシステムによるメジャーリーグ移籍に挑戦していた広島東洋カープの菊池涼介選手が、年明け直前の12月27日に広島残留を表明しました。

今日はこのニュースについて考察します。



目次

  1. 日本野球界の宝によるメジャー挑戦
  2. 菊池選手の挑戦を阻んだメジャーリーグのトレンド
  3. 今後の日本人内野手のメジャー挑戦における懸念

日本野球界の宝によるメジャー挑戦

まず、はじめに言っておきたいことは菊池選手は紛れもなく日本野球界の宝であるということです。


2011年に中京学院大学より広島東洋カープのドラフト2位指名で入団。
大学時代のポジションは主にショートでベストナインにも5回選出されるなどその実力は当時から折り紙つき。

入団一年目から二塁手として出場し成績を残すと、二年目からはレギュラーに定着。2015年シーズンからの緒方孝市監督の下では、田中広輔選手、丸佳浩選手と「タナキクマル」の鉄板&鉄壁上位打線を形成し、2016〜18シーズンまで広島カープ3連覇に貢献した立役者。

2020年でプロとして9シーズン目を迎える29歳です。


菊池選手の魅力は言うまでもなくその守備。

守備範囲、捕球から送球への動作、肩の強さなど、守備に必要な要素を極めて高いレベルで兼ね備えています。それを全て可能にするのは打球への嗅覚の鋭さと瞬時の判断力です。


✔︎入団から2019年までの守備成績

※太字はその年のセ・リーグ最多 ※赤字はNPB最多記録

レギュラーに定着した2013年から2019年までゴールデングラブ賞を獲得。


菊池選手の代名詞といえばグラブトスでしょう。

2014年の日米野球でその守備が光り、“ Ninja”と評されメジャー選手はもちろんスカウトからの注目を集めました。

守備ばかりフォーカスされますが菊池選手は打撃面でもとても素晴らしい選手です。


✔︎最近5年間の打撃成績

※通算は2012年〜2019年の8シーズン ※太字はその年のセ・リーグ最多

二度のシーズン打率3割超えと、2016年には最多安打のタイトルを獲得。
Ninjaでも決して小粒なバッティングではないのです。


そして特筆すべきは犠打です。
上の成績表からもわかる通りプロ8年間で6度のリーグ最多犠打を記録しています。


つまりチームバッティングがこれほどできる選手はいません。


近年はメジャーリーグで唱えられた2番最強打者説が日本でもトレンドとなり、セ・リーグでは巨人・坂本勇人選手はじめ、DeNAベイスターズ・筒香嘉智選手が一時期2番に座るなど各チームでその戦略が試されています。

しかし、
2番でもっともチームに貢献できる最強打者、それは菊池選手だと思っています。

そんな攻守にわたってカープ3連覇を支えてきた実績を携え、2019年シーズン終了後にメジャー挑戦を宣言しました。




菊池選手の挑戦を阻んだメジャーリーグのトレンド

日本人選手が「メジャー挑戦」という言い方をしますが、受け入れるメジャーから見ればあくまで「助っ人の獲得」です。

日本人の力試しのために登録枠を空けてくれるメジャーのチームはありません。


海外FA(フリーエージェント)権を持たない菊池選手が利用するポスティング・システムというのは文字通り「入札」です。選手への年棒とは別に現在籍球団への補償金も発生します。だからこそ獲得される選手は即戦力としてチームの勝利に貢献することが求められます。

問題はメジャーのチームからみて菊池選手にその価値があったのかということですね。


まず現在のMLBにおける特徴として挙げられるのが以下の2つです。

①データ分析に基づいた極端な守備隊形

俗にいう「〇〇シフト」です。

打球が左右どちらか一方向に飛ぶ傾向の強い引っ張り系の打者に対して用いられ、日本でも近年ごくたまに見られますが、メジャーではその回数が上がっており、一定の成果も出ているためその傾向は年々高くなっています。

内野の守備隊形が一方に寄るだけならまだしも、打球が内野から抜けないように外野手が内野まで寄って内野5人シフトを敷いたりもします。

つまり、「守備が得意ではない選手でもベンチワークで守備をカバーしよう」という戦術となっています。

メジャーリーガーの醍醐味であるスーパーキャッチに期待するよりもアウトを取れる確率の高い守備を優先しているのですね。


もちろんメジャー球団のスカウトにとって菊池選手の守備は魅力です。
しかし守備の選手をレギュラークラスとして使えるか、という判断になります。

打率という面では近年の成績を見ると印象が弱くメジャーのレベルには達していない評価と言えるでしょう。チームの編成を考えると守備は劣っても金額が安くて打撃の伸びしろがある若い選手を優先することは想像できます。

②犠打、特に送りバントを使うケースが少ない

近年のメジャーの犠打は日本の約1/4という統計も出ています。前述の2番最強打者説はメジャーから発信されている通り、細かいバッティングよりも長打が出て走力のある選手が優先的に起用されます。

菊池選手も走塁は上手く盗塁数も少なくないのですが、もし盗塁のタイトルに絡められるNinjaの如き脚という武器があればメジャーの評価が変わっていたかもしれません。


また内野手には細かいサインプレーや野手間での意思疎通など瞬時のコミュニケーションが要求されます。メジャーのスカウトやフロントが海外選手の英語力・会話力をどこまで重要視しているかはわかりませんが、明らかにプレー以外の精神的負担は大きいはずです。

報道を見る限りでは菊池選手の獲得に手を上げた球団は複数あったと思います。しかし日本プロ野球界のトップクラスの選手としては年を越してまで移籍を悩む契約条件のオファーがなかったのでしょう。




今後の日本人内野手のメジャー挑戦における懸念

2020年シーズンは、DeNA・筒香嘉智選手がタンパベイ・レイズへ、巨人・山口俊投手がトロント・ブルージェイズへ、西武・秋山翔吾選手がシンシナティ・レッズへとそれぞれ海を渡ります。

筒香選手と秋山選手はチームの勝利に直結できうる打撃力、山口投手は落ちる球を武器に短いイニングでも長いイニングでも使える点で、チームとしての起用法が見えているために獲得に至ったのだと思います。


しかし、今回の4選手のメジャー挑戦の目玉は菊池選手でした。


振り返ると日本人内野手のメジャー挑戦は高いハードルでした。

西武で走攻守を兼ね備え「日本プロ野球史上最高のショート」と評された松井稼頭央も2003年のオフにメジャー挑戦を表明しニューヨーク・メッツに移籍。しかし向こうではシーズンが進むうちにショート守備の評価が低くなりセカンドに転向するも、今度は打撃が及第点となり日本時代のような圧倒的な成績は残せませんでした。

他には現・千葉ロッテマリーンズ監督の井口資仁はじめ、岩村明憲、西岡剛、川崎宗則 etc.と日本では一流の内野手たちがメジャーに挑戦するも苦労を強いられました。


そして2014年オフのメジャー挑戦を宣言するも断念した鳥谷敬以来、内野手でのメジャー挑戦の声は遠のき、5年ぶりに守備のスペシャリスト菊池選手のメジャー挑戦に注目していました。

しかし残念ながら菊池選手はカープ残留となり新たに4年契約を結んだので今後のメジャー挑戦は現実的ではなくなりました。


恐らくプロアマ問わず現在の日本野球界でメジャーに憧れを抱く内野手は多くいることでしょう。しかし菊池選手であっても厳しい現実を突きつけられたということであれば、次にメジャー挑戦を宣言する内野手が今後出てこれなくなるのでは、という危機感を抱いてしまいます。

もっと極端に言えば、将来的にメジャーに行きたいから早々に外野に自らコンバートする、というケースもあり得ます。

そういう意味で菊池選手は「日本人野手のメジャー挑戦への試金石」だったと言えます。


日本のスター選手が海外に行ってしまうと寂しい、試合が面白くなくなるというファンの声もありますが、サッカーも同じくリーグのトップ選手が数人抜けたからといって、リーグの質が下がってはそれは組織そのものに問題があると思います。

ましてや海外リーグは動くお金も日本とはケタ違いです。そういう意味では子供にわかりやすく夢を与えられます。


イチローが引退し、2020年シーズンでメジャーリーグに所属する日本人野手は二刀流の大谷翔平選手に加え、筒香選手と秋山選手の3名です。いずれも外野手もしくはDH(指名打者)で、内野手はいません。

しかし2019年のプレミア12で優勝した通り、日本の野球の強さを改めて感じたと同時に若手内野手の著しい成長も感じました。


恐らく次はヤクルト・山田哲人選手のメジャー挑戦が目玉となってきます。

それ以外にも名乗りを上げる内野手が今後も出てくることを期待しながら、2020年も日本の野球を楽しみたいと思います。

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