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【私的分析】プロ野球6月19日開幕推進、その理由と課題


本日5月9日付の朝刊一面で「プロ野球が最短で6月19日の開幕に向けて準備を本格化させていく。」という内容の記事が載りました。

プロ野球6・19開幕へ「日常」取り戻す先陣切る
──日刊スポーツ2020年5月9日5時0分

緊急事態宣言の延長により、さらに開幕の見通しが立たなくなると思われた矢先の今回の報道です。

プロ野球だけを取れば、コロナウイルスの感染状況や各政府の方針は違えど、すでに4月12日に台湾CPBLが開幕し、韓国プロ野球・KBOリーグも5月5日に開幕しました。

日本では通常通りシーズンに入っていれば6月14日(日)にセ・パ交流戦が終了する日程でした。しかし既に交流戦が中止は発表されているため、交流戦後のリーグ戦再開となる6月19日(金)に照準を合わせて開幕をさせたいという考えのようです。

6月19日が開幕のリミット

現時点ではこれからNPBや12球団代表者会議を通じて検討段階に入るということなので、緊急事態宣言が5月末で解除されるのか否かによっても変わっては来るはずです。しかし本日の記事が先行して世に出たということは、つまりこういうことではないでしょうか。


「プロ野球としては6月19日開幕がリミットである。」


開幕における懸念点としては、プロ野球ファンにとっても一番の気がかりである「観客を入れるのか、無観客として開催するのか」という課題があります。仮に5月末で緊急事態宣言が解除されても、そこから僅か半月後に通常通りの集客をするのは世論としても無理だと思われます。自宅からどこでもドアで球場に入れるわけでもなく、そこには試合前後の短時間で数万人規模の公共交通機関の密集利用も生じます。


つまり、プロ野球を運営するNPBそして12球団の総意としては、
「無観客でも6月19日開幕で進めたい」ということになります。


現在プロ野球の1シーズンにおける1チームあたりの公式戦の試合数は143試合です。
昨年2019年シーズンでは6月の第3週目というと既に約60試合、つまり3分の1以上の試合日程が消化されていました。
たとえコロナウイルスが収束しても7月や8月の開幕ではシーズンとして成立しなくなる、その前に無観客でも6月中に開幕をしたいという意図だと思われます。

試合数削減を避けたい理由のひとつには、野球協約では「1シーズンのうち各チーム最低60試合はホームゲームを実施しないといけない」規則になっています。つまりビジターチームになった試合も含めると1チームにつき計120試合を行う必要があるのです。
参考記事:プロ野球の開幕延期でフォーカスされた「野球協約」を知る


ですが、プロ野球は興行です。
お客さんを入れて、チケット収益をもって球団運営、試合運営を行なっていくのがプロスポーツです。無観客試合は3月のオープン戦や練習試合で行いましたが、あくまでチームも選手も調整段階であり公式の成績ではないので何とか成立していました。
それでは公式戦となった場合には、無観客の状態で週6日の試合日程をこなすのか、また歓声もない中で選手のモチベーションは保たれるのか、という点が問われます。


そして、興行収入が入らないということは球団にとって大きな痛手です。
昨日の日本経済新聞に次の記事が掲載されました。

DeNA、揺らぐ二本柱 プロ野球、1年無試合で100億円損失も ゲーム、課金収入減
──2020/5/8付日本経済新聞 朝刊

記事の詳細は実際の朝刊か日経電子版の会員限定でしか読めないのですが、タイトルだけで言いたいことはわかると思います。

DeNAは2011年のオフに横浜ベイスターズの経営権を獲得して以降、着実にチーム力と集客を伸ばして買収から5年経った2016年に黒字化に転じました。
ですがDeNA本体としてはもう一つの収益の柱である主力のゲーム事業の収益悪化や新規事業関連の損失もあり、ベイスターズの球団運営はDeNAとしては大きな営業利益を安定的に生み出せる事業となりました。

しかし今回の開幕延期により、たとえ6月19日に無観客で開幕をしたとしても興行収入がなければ、野球事業が親会社の支えになっている球団にとってはその損益は大きなインパクトになります。

また6月19日に開催する場合、そんなベイスターズの相手は広島カープです。
この球団も特定の親会社を持たない市民球団として経営をしているので、その損害はDeNA以上と言えます。
※ちなみに地元広島のマツダは球団の3分の1以上の株式を保有する筆頭株主という立場で球団経営への積極関与は行っていません。

試合数削減の背景にある個人成績の事情

しかし、無観客であっても開幕を早期に進める理由としては、上述の通り7月や8月の開幕ではシーズンとして成立しなくなるという点にあります。
具体的に挙げると、以下になります。

まず1つは、選手としての契約期間の問題です。
開幕延期に伴い、それでは遅れた分を12月に後ろ倒して試合を行えるのか?という疑問も出てきます。
しかし、野球協約では「選手の契約は毎年2月1日から11月30日まで」と定められているため、日本シリーズも含めて本来は11月中に全試合日程を終了しないといけません。

もっともコミッショナーの特別な許可があれば、例外的に12月1日以降も試合を行うことはできますが、12月に屋外球場でも試合を行うのかという点と、来シーズンは延期したオリンピック開催で再び前倒し日程となるため、あまり現実的ではないでしょう。

もう1つには、成績による評価と査定の問題が挙げられます。
通常は143試合の成績をもって優勝やCS進出、選手の個人成績タイトルが決められます。
これが通常の年より少ない試合数で決まってしまいます。正直優勝などチーム成績はそれでも仕方ないですが、個人成績はその価値が落ちてしまいます。

私見になりますが、「個人タイトルは100試合目を越えた夏場にかけて疲れの溜まってくる辛い時期を上手く乗り越えた選手が獲得するもの」だと考えています。仮に100試合以下でタイトルを決定した場合、特に打率は高い数字のまま終了する可能性もあるため、その価値に疑問も出てきます。

そのために一試合でも多く試合を行って得られた成績の方が、選手にとっても真の価値になるのではないでしょうか。

また、成績は翌年の年棒の査定にも深く関係します。
年棒自体は今シーズンの試合数に関係なくサインした金額で支払われますが、翌年の契約更改の際の判断材料として非常に困ります。極端に言えば試合数が半分になったから成績は参考にせず来季の年棒は今年の据え置きで、というわけにはいきません。

さらに、秋にはドラフト会議で各チーム5〜10名は指名され新戦力が入団してきます。
となると少なくとも同じ数はシーズン成績の結果で査定し戦力外通告をしないといけません。そうなると特に当落線上にいる選手は不完全燃焼のままでシーズンを終えることになるので不本意となりますね。

他にもFAの取得日数やトレードなど試合数の削減による諸問題はあります。
この辺については先日以下のように書きました。
参考記事:プロ野球の開幕延期でフォーカスされた「野球協約」を知る


現時点ではスポーツ紙1紙のみの報道ですが、上記の理由を鑑みて水面下で6月中の開幕に向けた動きがあるのは間違いないとみられます。緊急事態宣言の解除時期によっても状況は変わっては来るはずですが、日本における最大のスポーツ興行であるプロ野球の開幕の動向は、日刊スポーツが『「日常」取り戻す先陣切る』と書いたように、他のプロスポーツやエンターテインメントにも大きな影響を与えるでしょう。



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